iOS 7 時代に良質なアプリアイコンをデザインするための十ヶ条

– 壹 – シンプルこそすべて。という幻想から離れよ。

「シンプル・イズ・ベストだ」「Less is Moreだ」と声高に叫ぶことは容易い。しかしそれを形にし目的を果たすのは、それほど簡単なことではない。

ただ単純化しただけですべてのものが美しくなるわけではないからだ。

シンプルだから美しいのではなく『ありのままでも美しいものが、その通りにあるから美しい』と感じるのだ。

目的を忘れてはいけない。見た目をシンプルにすることが目的ではないはずだ。その上でシンプルさを重要視するのなら、見た目以上に『そのアイコンを見た時のユーザーの感情をいかにシンプルにできるか?』という点に集中した方が良い。

– 貳 – 有名ブランドのデザインに迎合するな。

もしも、あなたがデザインしようとしているアプリや会社のブランド力が既に充分あるなら、出来る限りシンプルでシンボリックなデザインを目指すべきだろう。(無名ブランドだとしても、App Store以外の場所でプロモーション展開し、その効果を大きく望めるのなら同様に考えても良い。)

シンプルでシンボリックなデザインはそれだけで品格を与えてくれるからだ。

ただ、有名企業/ブランドのデザインが良しとされるのは『〇〇のデザインだ』というフィルターの影響が多分にあることも忘れてはいけない。
それは突出したブランド力を持つからこそ成せる技だ。

もしも無名なアプリがApple製のアイコンをそっくりトレースしたようなデザインを採用したとしても「アイコンがダサい」「色が派手すぎる」と批判される可能性は少なくないだろう。それを補うにはそれなりのプラスαが必要になる。

有名ブランドやヒットアプリのアイコンデザインを過大評価してそれを真似るのではなく、そのデザインそのものがアプリの顔に値するかを見極めるべきである。

– 參 – 単純な頭文字ロゴを避けよ。

純正の標準アプリを参考にした場合、「シンプルなシェイプ + グラデーション」で構成するのが正解だと思い込みやすい。しかし、シンプルで説得力のあるシェイプをつくることはそう簡単なことではない。
アプリの内容にもよるが、明確なシンボルに落とし込みにくい場合も多いだろう。

そこで陥りがちなのが、独自のシンボルの代用としてアプリの頭文字を使うこと。
決して全くの間違いではないが、そう言ったアイコンが今後量産されるだろうことは容易に想像がつく。そうするのが簡単だからだ。
そうして結果的には、そのようなアイコンのほとんどが埋没することになるだろう。

PSやAIといった単純な頭文字と色だけで成り立つのは、Adobeという強力なブランド力があるからであり、あなたのアプリはきっとそうではない。

もしも、頭文字を使用する必要があるなら、充分に説得力のある形/シンボルとなるように手を加えるべきだ。たとえ同じアルファベットの他のアイコンと並べられたとしても、その違いがはっきりと分かるように。

– 肆 – アイコン全体を使った現実世界の模倣を辞めよ。

アイコンの角丸形状を上手く利用して立体物に見せるような手法は、今までは確かに有利に働いてきた。しかし、既にそれは過去の話になりつつある。

現実の本の装丁やカメラをデフォルメしたようなデザインはその顕著な例だ。アイコンの内側に立体的な縁取りをつけるのも同じ。
これらは新しいホーム画面の上ではノイズとなる可能性が高いだろう。

だが、日々技術を磨いてきたその腕を切り捨てるのはまだ早い。頭を切り替えてもう一度冷静に見つめなおすのだ。
きっとそこに新しい切り口が見えてくる。

– 伍 – フラットデザインの終わりの始まりを意識せよ。

フラットデザインそのものがメリットになるタイミングはもう過ぎた。(個人的にはそういった単純すぎる見た目に正直、飽き飽きしてきている。)
この感覚はきっとそう遠くない将来、一般ユーザー層にも拡がるだろう。今あるフラットデザインは流行りのファッションのようなものだと思っていた方がいい。つまり、あまりそれに頼るべきではないと言うことだ。

今後の流れによっては、”ネオ・フラットデザイン”などという言葉がもてはやされる時が来るかも知れないが、きっとそれも違う。

作り手が追うべきはトレンドではなく、それとは全く別の方角にあるはずだ。

– 陸 – 平面的な考え方から飛び出せ。

iOS 7 = フラットデザイン。と単純に考え『新しいアイコンはフラットにしなければならない』と思い込んでいる人も少なからずいるだろうが、そもそもiOS 7は所謂フラットデザインとは全く別の物だと私は考えている。
また、Apple自身もアイコンを平面的にしろなどとは言っていない。(*)

確かに今までのように、アイコンそのものを現実世界の何かに見立てるのには無理があるだろう。では、例えば一部の要素だけに立体感やリアル感を加えつつ、iOS 7のインターフェイスになじませることは出来ないだろうか?

平面か?立体的か?などという上辺だけの問いかけに惑わされてはいけない。
平面的なデザインでも充分な存在感とオリジナリティを出せたならもちろんそれでも良い。しかし、もっと別の可能性も掘り下げるべきだ。

いずれにせよ、短絡的な思考でデザインの可能性を自ら狭めてしまうのは勿体ない。

(*参考リンク: HIG > App Icon, HIG > Icons and Graphics) ※要デベロッパアカウント

– 柒 – 違和感をうまく取り入れよ。

違和感にも良いものと悪いものがある。
悪い違和感はすなわちノイズ。目障りなものだ。良い違和感とは自然にそこに視線が行き、不快感をあたえないようなもの。(個人的にはホーム画面に多様なデザインのアイコンが並んだ、おもちゃ箱をひっくりがえしたような雰囲気も好きだ。)

違和感を上手く操れば、それは印象的でユニークなものになり得る。

– 捌 – アプリの寿命を頭におけ。

企業ロゴなら10年先を考えてデザインされるのも珍しくないだろう。だが、いちアプリがそのままの形で10年持つ可能性は極端に低い。

ならば、2〜3年先を見据えつつも、『今』最良と思えるデザインを目指すべきだろう。それを一年くらいの周期で見直し、時代とズレてしまう兆しが見えたならそこで変えていけばいい。

今はまだアプリもデザインも変革期の中にあるのだから。

– 玖 – 雰囲気を創りだせ。

かなり抽象的な言葉だが、良質なデザインはそれだけである種ユニークな雰囲気や説得力を持っている。もっと単純に言えば『見る人に良いイメージを与えられるか?』だ。

今までは、木目やレザーに代表されるようなそれっぽいテクスチャを使えば、ある程度楽に雰囲気作りが出来た。しかし今の流れの中では、あからさまなテクスチャは助長と捉えられてしまう。

その上で雰囲気を出すにはどうすれば良いだろうか?
それこそが腕の見せ所だ。

– 拾 – アイコンとしての役割を果たせ。

アイコンに必要な条件を挙げてみる。

・それは印象に残るか?
・ホーム画面に起きたくなるか?
・アプリ本体とのイメージが繋がるか?
・しばらく使われなかったとしても、そのアイコンを見た瞬間にアプリの中身を思い出せるか?
・それをタップしたくなるか?

OSのデザインが変わっても、アイコンがアプリの顔であり、顧客を掴むための入り口のひとつであり、ユーザーがアプリを起動するためのボタンであるといった事実に変わりはない。
インターフェイスの刷新に伴って、(少なくとも現段階では)アイコンが果たすべき役割や機能が減った訳ではないのだ。

根幹を見落としてはいけない。
アイコンにはまだ、その存在価値が残されているのだから。
 
 
以上。

今まで多くのクライアントに恵まれたお陰もあり、デザインした内のいくつかのアイコンが国内外のアイコンデザイン紹介サイトなどで掲載してもらえるなど、一部のユーザーや開発者の方々にも注目してもらえるようにはなった。

そんな中、発表された新OSのインターフェイス。

そのあまりの違いに、今まで信じてきたデザイン思想を覆されようにも感じて『もう、続けられないかも知れない』と考えたこともあった。

それでももう一度、冷静に新しい iOS への自分なりの解釈をし、今後も続けていく者として『iOS 7のアイコンデザインとはどうあるべきか?』をまじめに考えてみた。

この内容には多くの私見が含まれているし、異論も多くあるだろう。
自分への戒めも含めた言い切りの文体にしたため、偉そうに聞こえる部分も多いかも知れないが、どうかご容赦頂きたい。

何より、同じように苦悩している同士への一助になれればと願う。

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iOS 7 時代に良質なアプリアイコンをデザインするための十ヶ条」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 【おはあぷ】秋のリジェクト祭り開催中! | あぷまがどっとねっと

  2. ピンバック: iOS 7のアイコンがダサいと感じるのは何故か?という考察。 | Everything was born from Love

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